気さくに声をかけた、それだけで目の前の存在はフランへと移り変わった。
それだけ漣蓮の持つ力と言うものは大きかったのだ。
しかしこれは漣蓮の能力などではない。
ただ、フランの中にある漣蓮と言う存在がそこまで大きなものになっているが故の力なのだ。
だが、察しの悪い漣蓮がこれを理解する事など実質不可能で、それを感覚的に理解し捉えていたフランもまた、期待などしていなかったのだろう。
起きた現象を理解しようと脳が動く。
酷く荒れた現状を、これまたどう捉えるのか。
否、捉えていいのか。
フランは先ほどまで精神崩壊状態にあった。
その状態で巻き起こした惨劇を写せば、更なる崩壊を招く可能性も捨てきれない。
誰も喋らない。誰も止めない。
意識的なものなのか、この空気に圧倒された故の静寂なのか。
誰もが切ろうとしないこの空気を切るのは、当人であるフランだった。
「・・・私が、やったの?」
その質問に、誰も答えない。答えたくない。
今まさに実の妹に殺されかけたと言うレミリアさえも何も言わない。何もしない。
動き出したと思われたこの空間の時間は止まっているのだろうか。
そう思ってしまうほどに何も動かない。音もない。
1分と経った頃だろうか。レミリアがそれを壊した。
「・・・貴方がこうした。壊して、殺して・・・あなたの仕業よ」
そう、この空間にいるべき存在が一つ足りない。
紅魔館に努め、レミリアに従い、館唯一の人間でありながら能力を持つ、彼女がいない。
十六夜咲夜。完全で瀟洒なメイド長。
常にレミリアに付き添っているメイドが居ないのはおかしい。
それは紅魔館に住まうものとして常識に等しい判断であるはず。
だがその判断が遅れたという事は、フランもかなり動揺しているのだろう。
言われて初めてその状況を理解したのだろうフランは、格別驚く等しなかった。
だが、その事実を事実として捉える事にかなり時間を要したようだ。
何十秒と経った頃だろうか。フランが口を開いた。
「そう・・・なんだ」
まるで他人事のような言葉。
その言葉を聞いたレミリアは、怒りに染まった声色で怒鳴る。
「そうなんだじゃないわよ!ふざけないで」
その声に悲しみの色が隠れている事に気付いたのは、心の読めるさとりだけだった。
捉え方は色々あるだろう。だが、誰もが共通して思った。
――レミリアはフランに対して、少なからず敵対している。
先のフランがそうだったように、今のレミリアはフランを敵とし、警戒している。
レミリアの能力は運命を操る程度の能力、フランの能力はありとあらゆるものを破壊する程度の能力。
姉妹と言えどその差は5年。吸血鬼と言う人間と比較してかなり長寿な種族の5年など、ほぼ誤差であるだろう。
文面だけでの破壊力で言えばフランの方が圧倒的に強い。
だがレミリアとて簡単にやられるような存在ではない。伊達に紅魔館の主をしていない事はある。
その破壊力が勝つのか、そのカリスマが勝つのか。
一触即発。そんな言葉が相応しいだろう。
だが、そんな空気をまたも壊したのは漣蓮であった。
具体的に言えば、彼は自らの能力を使った。
それはある種の賭けでもある。
だが、それが成功するとしたら・・・余りにも呆気無さ過ぎる。
こんな状況が、こんな世界が、いとも容易く解決に導けるのか。
そんな葛藤があったのか定かではないが、その賭けは良い意味で世界を壊した。
漣蓮の能力は「万物を操作する程度の能力」
これが何を意味するのか。
漣蓮は何故今までこの考えに至らなかったのか。
そんな簡単な疑問であった。
後書き
はい、どちらの視点でもない第三者目線の話です。
これを主観で書くとか私には難し過ぎた・・・orz
前作がめっちゃハイテンポで進んだのにこの話はめっちゃゆっくりですが、意図的です。
と言うのも、これは第三者目線の話なのでいちいち細かく描写してみたかったんです。
私は最近ストーリーの中で描写が下手だなと思ってきたので練習がてら。
作品事情はこのくらいにして、執筆者情報へ
まじめんでぃー
何故か知らんが今月滅茶苦茶大変なんだけど。
そして来月には定期テストと検定とお仕事が。
わ~い。
若干放心状態に入りかけてますがまだ病んでません。
ちょっと堪忍袋の緒を切ろうかと悩んでいる所です。
まあ話すと愚痴って滅茶苦茶長くなるので話しませんが。
んじゃまあ、
よいフリーライフを。
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