第6話 支配 フラン視点

許さない。全て、絶対に許さない。

こんな私でさえ生きようとする。

死んでしまえばいいのに。

そこまでして何になる。

希望的観測にすがる愚かで醜い行い。

この私が折角殺してあげようとしたのにそれすらも防ぐとは。

なれば、残された手段は唯一つ・・・。

――直接乗っ取って支配するだけだ。


寝たら駄目だ。寝たら駄目だ。

うっかりでも許されない。

寝てしまえば、死んでしまうかもしれない。

自分が怖い。自分が憎い。

唯でさえ消耗していた神経が睡眠不足によって更に過酷なものへと変貌する。

それでも尚、唯の願望に全てを託し、まだ今日も生きようとする。

寝たら・・・死んでしまう・・・殺してしまう・・・。

せめて、せめて蓮に会いたい。初めて私を、私と言う存在そのものを肯定してくれたあの人に。

頬を引っ叩き強制的に起こす。

少し歩くなどして気を紛らわせる。

寝てはいけないと強く思う。

何が起こるかわからない。

今迄は部屋が荒れるだけだった。なのに前は自殺しようとしていた。

動脈部分を重点的に切り裂いていた。

血は吹き出し、周りは真っ赤に染まり、しかし吸血鬼の再生能力は桁外れて高性能だ。

その点あってか今や傷跡一つ残っていない。

ふと、蓮との楽しい思い出が脳裏を過ぎる。

唯一緒に会話していた。それだけだった。

自己紹介、幻想郷について、種族について、能力について・・・。

その殆どが説明だった気がすると今更思う。

それでも、今でも鮮明に覚えている。

私が吸血鬼である事に驚かなかったあの瞬間を。それどころか喜びを溢れんばかりの感情で表現していたあの瞬間を。

あの瞬間に、私は生きる意味を見出せた気がするのだ。

たったあれだけで、私の無駄だと思えた400年が意味あるものに思えてしまったのだ。

400年も無駄だと思い続けて来たのに、一人の人間のほんの一瞬会話しただけでその全てを肯定出来る様になった。

あの人間、蓮はどういった人物なのだろうか。

何処か知らない世界から幻想入りして来たただの人間。

それでも、楽しそうだった。

起こる全ての出来事を認め、理解し、知識として蓄える。

その前向きな姿に惚れたのだろうか。

あぁ、そういえば私は蓮に「可愛い」といわれたな。

今迄生きてきて、存在すらも無下に扱われて来たと言うのに、可愛い、と。

久し振りに感情を思い出したあの日、凄く恥ずかしかったな。

けど、何処か嬉しくて、照れてて、満更でもなかったな。

蓮に、会いたいな。

一瞬の油断が仇となった。

その瞬間に私は睡魔との闘いに敗れたのだ。

それでも、もう後悔はしていない。

蓮に会えなくても、この思い出があれば、もういいかなと。

そう思ってしまったから。

諦めてしまったから。


なんだ、意外と簡単に堕ちるじゃないか。

色々対策打ってたのに。

しかし、この心の中身凄いな。

上辺は幸せなのに、最深部には憎悪、殺気、負の感情しかないとか。

まあ、だから狙ったんだけど。

幸せな思い出がありながら狂気に満ちているものほど堕ちやすいものはいない。

予想以上に素晴らしい出来栄えだ。是非ともこのまま私のものにしたい。

より強く眠らせるか。

そうすれば、殺さなくても済む。

体は・・・な。


後書き

わからない人が多いと思いますので説明しますよ~。

最初と最後に話しているのはフランではなく、いつぞやにフランの心に埋め込まれた闇です。

なのでフランはこの闇に乗っ取られたという事です。

この闇の正体は後々暴かれるのでこれ以上は黙っておきます。

まだフランは支配され切っていません。そこのところも勘違いしないようにお願いします。


いや~何故か滅茶苦茶ストーリーが浮かぶもんだからどんどん書いちゃうぜ~?

その分設定管理が面倒になるんだけどな。

読者にはそんなもの知るかという感じだと思うので深くは話しませんが。

今回はあまりにも難し過ぎたね。

まあ長話も程ほどに。

よいフリーライフを。


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