第7話 狂気 フラン視点

白い、白い夢を見た。

何も無い世界の夢を見た。

何処までも白く、空虚で、虚しく、広い世界。

そんな私も同じく空虚なのだろうか。

何も無い世界に音が現れる。

それは喧騒のような騒がしさ。

人々の会話の音だろうか。

何と言っているのかまでは分からない。

それでも、何か話しているような。


地下深くの幽閉部屋。

そこに佇む一人の少女。

悪魔の妹と言われたスカーレット家の妹、フランドール。

今やその顔は狂気に満ちている。歪み、曲り、捻くれている。

破壊衝動が抑えられない。

手当たり次第にものを壊して行く様は見るもの全てに恐怖を与える。

無意味に、無機質に、無情に、不条理に。

潜在的な恐怖を引き立たせ、全てを破壊する。

破壊出来るものは全て破壊する。

破壊出来ないものは歪ませる。

世界の理すらも曲げてしまうようだった。


突如、紅魔館が揺れる。それは地震に近い衝撃だった。

その揺れの原因と言うのが・・・。

フランドール・スカーレットだった。

狂気に身を染め、破壊神の如き存在感を放つ。

揺れの理由は、そんなフランがこの部屋の壁の一部を壊したから。

並大抵の妖怪では破壊出来ないそれも、フランの能力にしてみれば容易い事だ。

「ありとあらゆるものを破壊する程度の能力」

現存するものすべてを破壊出来る能力。その対象に、この壁も含まれていた。

壊された衝撃で部屋は崩れ始める。

しかし壊された壁の先には地上へと続く階段がある。

コツッコツッ。

ゆっくり、一歩ずつ上っていく狂気の人形。

それが何を目的としているのか。誰もわからない。何故なら体の持ち主がそこにいないのだから。

あるのは体を支配する狂気だけ。

彼女の感情は狂気に満たされ、その他でもない。

狂気、狂気、狂気。

狂った人格に、正気はあるのだろうか。それすら危うい。

地上へと出たフラン。

いつものフランなら此処で喜びの一つでも表しているだろう。

だが今は違う。

喜びなんて無い。あるのは共通して唯一つ、狂気のみ。

彼女を止められるものはいるのだろうか。否、出来る筈が無い。

現存するすべてを破壊出来るのだ。近づけば消される。それぐらい誰でもわかる。

ゆっくりと、しかし一直線に向かった先は・・・。

紅魔館玉座の間。

中央最奥に佇むレミリアを見据え、笑う。

狂った笑いは、その場の雰囲気とはまるで異なる。

それなのに何処かしっくり来るのは、この雰囲気を作っているのが彼女だからだろう。

笑ったら、口を開く。

それは聞きなれたフランの声ではあるものの、明らかにフランのものではなかった。

「お姉様・・・遊びましょ?」

妹が姉に求める遊戯のそれとはまるで桁が違う。

戯れで済まない。そんな事で済んだら、済んでしまったら、この世界は戯れで消滅しかねない。

レミリアの表情が強張る。そして、問う。

「フラン・・・じゃないね。貴方、誰」

フランの体、フランの声。全てフランのそれと同じ。

唯一つ、その狂気に染まった表情だけはもはや生物のものといえるかすら怪しい。

「何言ってるの、お姉様・・・フランだよ。ねえ、遊ぼう?」

フランの言う、遊ぶ、とはどういう意味なのか。

このフランはレミリアに何を要求しているのか。誰もわからない。

そんな刹那に事は起きた。

フランがレミリア目掛けて飛んできた。

右手にはレーヴァテイン。戦闘態勢だ。

反応が遅れたレミリアの前に、歪み切った妹の顔が近づく。

右手が振り上がり、レーヴァテインが落ちて来る。

防御すら出来ないレミリアに、この状態で成す術は無い。

レミリア自身も諦めかけた。

ぐしゃぁっと、惨い音がなる。

周りには血が飛び散り、元々赤かった広間を更に紅く染める。

誰もがこう思った。フランですらそうであると確信していたのだから。

レミリアの死体がそこにあるはずだと。

レミリアは生きている。傷一つ無く、そこに在る。

では、先の現象は誰のものかと言うと・・・。

「・・・っ!?咲夜!!」

紅魔館に努め、主のメイドとして働き、主に忠誠を誓った館唯一の人間。

十六夜咲夜。

能力者と言えど元は人間。フランの攻撃に耐えられるはずが無いのだ。

咲夜の体はバラバラに弾け、それが咲夜だと判断するのは難しいだろう。

それなのに咲夜と判断出来たのは、惨い事に首から上だけが綺麗に残っていたから。

生首となった咲夜の最期の表情は何処か安らかだ。

もし、今彼女が喋れたとするならば。

「お嬢様の為に死ねるなら本望です」と言わんばかりの表情だ。

それでも容赦は無い。フランはレミリアへと畳み掛ける。

しかし防がれる。

対抗したレミリアに、もはや正気なんて無かった。

それはフランのような狂気によるものではなく、自分の心の拠り所を目の前で無様に壊された悲しみから。

目には涙を浮かべ、口は震えている。

「いい・・・じゃない・・・」

小さく紡がれるレミリアの言葉。

しかし次の言葉は宣戦布告とも取れるものだった。


「遊んであげるわよっ!!」


後書き

あはは・・・すっげ~長くなっちゃった。

いい感じに区切れなかったのでうだうだと話が長引いてしまいましたね。

さてさて、咲夜さん死んじゃったね。

え?そんな簡単に死なない?

大丈夫大丈夫まあ見てなって。

さてと執筆者事情へと。

めっちゃ足痛い。

多分成長痛だろうけど足の内側から引っ張られるように痛い。

マジでこれ集中していられないからね!!

最高に痛かったときは若干涙したし。

今はまだましなんだけどね。

まあそんな感じで執筆してるのでおかしな部分が今迄以上にあると思いますがどうぞ足を痛めてご閲覧下さい。

私が出来てないけど

よいフリーライフを。


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