第0話 幻想入り 漣蓮視点

「ねえねえあの番組見た?」

「その時もう寝てたww」

「次の授業って何するんだっけ?」

「確か自習じゃなかったっけ?」

――聞こえてくるクラスの姦しい声。

私はこのクラスが嫌いな訳では無い。が、好きでも無い。

だからこそこの騒々しさを姦しさに変換してしまうのだろう。

好きでも無い場所で毎日を過ごさなければならないこのもどかしさはいつになっても慣れないだろう。

そんな日々を過ごして行く内にどんどんと嫌気が指して行く。

気晴らしの為に私はよく森に出かける。

よく晴れた森の木漏れ日は幻想的で、嫌な事とか悩み事が吹っ切れる。

青々とした木々は悠々とした風に揺られ、幻想たる木漏れ日は煌めきを伴う。

見惚れる光景から目を離したく無い。

その気持ちからか今日はいつもより長く、奥まで進んで行った。

この行動があの事態を引き起こしたのかもしれない。


時間の許す限り奥へ奥へと進む足取りは軽かった。

浮かれているのか、楽しんでいるのか、はたまた現実離れしたこの景色に魅入っているのか。

探究心は尽きない。もっともっと奥へ、更なる幻想を求めて。

気が付いたら私は少し開けた場所にいた。

周りは葉で日の光が落ちて来ないと言うのに此処だけ上に葉が無い。

そこだけ意図的に開けさせたような空間に無意識の内に歩み寄っていた。

天を仰げば真っ青な青空が広がり、太陽が眩しい。

周りの木々は尚も悠々と風に煽られ、心地好いざわめきを醸し出す。

自分の時間はまだ全然余裕である。少しぐらい寝ていても良いだろう。

この心地好い空間で寝たらどれほど気持ち良いのか。

すやすやと、ふわふわと、現実から意識が遠退いて行く。


何時間寝ていたのか分からないが、天から降り注ぐ日の光の強さは変わっていない事からそこまで寝ていないのだろう。

それなのにこの目覚めの良さという事はかなり熟睡出来たのだろう。

最近はストレス溜まりで全く寝れない起きれない事が続いていたのでこの目覚めは驚きが大きかった。

しかし、何かしらの違和感がある。

木々も、風も、太陽も、何もかもが眠りに落ちる前と同一である。

それなのに、胸を焦がすこの違和感の正体は何なのだろうか。

とりあえず、自宅へ戻る事にした。

元来た道を戻り・・・。

そこで気付く。

周りは同じ形をした木ばっかり。

此処までの道のりに目印なんて一つも付けて来ていない。

進んできた道は、道とは呼べない獣道だった事も相乗し、今自分が何処にいるのか全く分からなくなった。

その際に、太陽を使うという方法がある。

私も、このような事態を想定した太陽や月、星等を使った座標の取り方ぐらいは勉強している。

しかし、太陽は真上に存在する。

その事から現在時刻は恐らく正午。

時刻と太陽の位置で方角が分かると言っているが、正午に限っては全く分からない。

真上である以上、時刻は確実であるが、東にも西にも傾かない正午の太陽は道標としては全く役に立たない。

此処に来て自分の不運さを妬む。

後2、3時間待てば方角ぐらいは分かるだろうが、それまでする事も無いし、何より早く家に帰りたい。

自分の直感で方角を見定め、自分の行き先を確定した。

とりあえず前進しようと思った矢先、何者かの足音が聞こえた。

2足歩行動物特有の一定のリズムで刻まれる足音は、その発音体が人間である事を物語る。

此処に来ての同業者との遭遇は願ったり叶ったりだ。

早速声をかけようとした刹那、それは躊躇われた。

木の影に隠れ、足音の正体、一人の少女を見つめる。

整った顔立ち、凛とした面影は華奢で愛くるしさを思わす。

背丈は少し低いぐらいで、着ている服や外見から少女のような雰囲気を醸し出す少女だが、決定的に異なる点が一つだけある。

彼女の背中からは羽の様な物が生えている。

しかし私の知っている羽と言うのは翼やその類の物だ。

彼女の有している羽と言うのは一つの翼根らしき骨格とそこから枝垂れるクリスタルのような輝きを見せる物体が一対あるだけ。

彼女の顔立ちが整っているからか、羽らしきクリスタルのようなものが輝いているからか、もしくはこの環境状況のお陰か、私の目に映る彼女はとても幻想的な存在に思えた。

触れれば壊れ、触れなければ何処かへ飛んで行きそうな、そんな印象を持つ。

儚い。そんな言葉が合うのだろうか。

もっとも、そんな思想は次の瞬間打ち消される事となる。

ばさっ。

何かが倒れる音。

木の枝が落ちる音ではない。

もっと重量を持った物体が、直立状態から無抵抗のまま転等したような音。

つまりは――

「おい!大丈夫か!?」

驚いた。彼女の儚さに。彼女の異様さに。彼女の衰弱さに。そして、


自分の声に。



後書き

初めてこういう企画やってみたけどどうでしたかね?

私は筆者経験なんて勿論無いので色々見よう見真似でやってますけど、やはりプロには適いませんね。

今回は漣蓮視点の導入部です。

最後に展開しそうな雰囲気になりましたが、まあ詳細は後々の投稿をお楽しみにしてて下さい。

今回登場しました漣蓮ですが、完全に私がモデルです。

勘違いされないように此処でちゃんと申し上げておきますが、漣蓮は男です。

一人称が私なのは対人関係上の関係です。

その辺のストーリーも気が乗ったら書いてみようと思います。

もしこのシリーズが好評だったら滅茶苦茶頑張りたいと思います。

話は変わって筆記中の話なんですがね。

この話を書いている時、丁度災害の元となる地震とかが沢山起きてたんですよね。

朝から地震が来るわ雷が目の前に落ちるわ土砂降りだと思ったら急に快晴になるし、そしたら本日二度目の地震ですよ。収まったと思ったら今度は雷雨が酷いという。

しかもその時に私人生で初めて緊急地震速報の生放送聞きましたからね。

一生涯一回も聞きたくない音楽上位を独占する緊急速報のアラーム音を聞くのがこんな人生の初めの方だ何て・・・どれだけ付いてないんだ。

まあこれ以上後書きを多くするとくどいと言われそうなので話は終わって。

今後はこのキャラ別ストーリーを考える事に専念します。

ストーリーをちゃんと認識してないとキャラ別の伏線合わせるのって滅茶苦茶大変なんだからね!!

自分でやってみて初めて分かる大変さ。

それでは、

よいフリーライフを。


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