自分の声に驚いた。
自分が発したと思われる声はどう聞いても女の声だった。
驚きのあまり、情けない意味を持たない言葉が並ぶ。
「え?あ、うぅ・・・はぁ」
最終的には諦めていた。
自分に起こった出来事が分からない。全く分からないが、一つ言える事があるならば、とてつもなく大きな出来事に巻き込まれていると言う事だけは確実に理解した。
面倒臭そうな雰囲気を隠さず見せる運命様に説教の一つでも掛けたいものだ。
―自分の事に集中していた所為で目の前の異常に目を向けていなかった。
目の前にあるのは一人の少女。
顔立ちは整った、凛とした幼さを残す愛くるしい少女。
背中から羽のようなものを生やし、そこにあるクリスタルのような物体は日光に反射し煌いている。
しかし彼女の体には無数の傷跡が残っていた。
ざっと見ただけで左腕、右足、右横腹と言ったところだろうか。
酷い損傷を受けており、息は心許無い。
自分が出来る事が何一つ無い現状に、何も出来ない自分に嫌気が指す。
学校で人命救助法は習ったはず。
使わない、必要ないといって疎かにしていた。
だから全く覚えていない。
自分の怠惰がこのような事態を引き起こしたと思うと、胸が痛い。
そうこう考えている内に彼女は今まさに衰退して行って。
――無かった。
衰退するどころか殆ど回復している。
可憐な姿に合わなかった傷跡はそれこそ傷跡を残さず消えていた。
そして、今更ながらに思う。
「お前は、一体何者なんだ」
口をついて出た疑問。
それに答える声は存在しない。
風に揺られて葉のかすれる音だけが自由に遊んでいる。
思い出したかのように自分の声が偶然出た高音では無いと悟る。
いくらか発声し、そして無意識に出した言葉でさえ、自分の聞きなれた声ではなかったのだから。
彼女のそばについて、そろそろ1時間が経つだろうか。
目の前で倒れた少女を放って置けるほど私の精神は強くない。
余計なお世話かも知れないが、何もしないよりは有効だろうと思う。
それと、もし彼女が自分に対し、友好的、最悪中立的であれば、現状の事について色々聞いてみたい。
どう考えてもありえない現象が続き、脳が理解する事を拒んでいる。
理解しなくてもいい。ただ知識として蓄えたいのだ。
彼女の寝顔には何処か安堵のようなものがある。
睡眠中は無防備だとは言うが、その通りだなと。
そんな他人事のような思考は突如遮断される。
目を開ければ目の前は火の海。
逃げ場の無い、真っ赤な世界。
火のせいか物凄く熱い。息一つするだけでかなり疲れる。
景色に大差無い事から先程の場所だろう。
青々とした森は火の手によって全く逆の印象を与える。
幻想的で何処までも澄んでそうな森は、見る物全てを絶望へと押し遣る。
何処までも、いつまでも広がり続ける火の手はその勢いを増す。
ふと気にかかった。
先ほどまで近くにいた少女がいない。
全く関わりが無い。それでも、気になった。
何処に居るのかと、生きているのかと、様々な考えが脳を過ぎる。
周りを見渡しても見当たらない。
ならばと、立とうとする。
立てない。動かない。
体が言う事を聞かない。
それもそのはず。自分の足には倒れてきたのであろう大木が刺さっていたのだ。
それを意識した瞬間、耐え難い痛みが襲い掛かる。
言葉にならない思い。
意識が逃げようとする。この痛みから、少しでも遠い所へと飛び立とうとしている。
それに乗ってしまえば、楽なのだろう。
しかし、そうしないのはやはり彼女が気になるから。
何をそこまで彼女に固執するのか、自分でも分からない。
でも、気になるのだ。
あの場所に辿り着いた少女に、耐え難い過去があった気がしてならない。
自分の勝手な思い込みかも知れない。自分の身勝手な願いなのかも知れない。
関係無い。今は、彼女が気になる。
ふと、違和感に気付く。
森を覆う火の勢いは増すばかり。
それなのに、自分の周りには一切火の粉が飛んでこない。
まるで誰かがこの場を支配しているかのように、そこだけが被害を被らない。
理由なんか思い当たるわけも無く、自然とその不自然に身を委ねる事になる。
事此処に至って、初めてこの事態の原因を探ろうとする。
目が覚める前、何があったのか。懸命に思い出す。
断片的で曖昧な記憶の欠片を並べ、話が繋がるように一つ一つを加工しながら繋げて行く。
――そして、思い出す。
思い出した瞬間、酷い頭痛が精神の全てを支配する。
まるで思い出してはいけなかった記憶かの様に、思い出した記憶を忘れさせるように。
気が付けば、自分の体から意識を切り離していた。
後書き
先に謝っておきますね。
今回、何かよくわかんなかったと思います。
だって作者の私がよく分かってないんですから。
色々な話を組み立てる中で此処だけはどの思考をとっても雑になるんですよ。
だから此処はその場限りの対応で凌いだ感じです。
どのように話を展開したかったのか。どのような話にしたかったのか。
分からない部分が多すぎます。自分の事なのに。
ま、もし今後不都合が生じれば地味に裏で加筆・修正してるので大丈夫でしょう。
それでは、
よいフリーライフを。
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