第6話 地底 漣蓮視点

初めて見る筈のこの景色。

それなのに何処か見覚えのあるような感覚。

それで尚この森の美しさは威厳を放っている。

澄み渡る青空。風に揺られ自由に舞う木々。

そんな時、ふと疑問に思った。

何故誰もいないのか。

誰もいなくても不思議ではない森の中。

この思想に至った要因は自分でも分からない。

この景色が公開されていないはずが無く、誰かが観光的な目的を持って訪れていても不思議ではないと思ったのかもしれない。

しかしそれだけでは納得しきれない部分が多々ある。

誰もいない、誰も来ない。それだけなのに今の自分の中には大いなる焦燥感がある。

私は歩き出すことにした。

方角も分からない森の中で。


随分と歩いたようだ。

最初に見た太陽は真上にあったのに今では目の前で夕焼けを残しながら沈もうとしている。

つまりはあちらが西かと今更ながらに方角を知る。

方角と言うのは実に便利なものだ。

世界共通の向きを示す指標であり、何処か一つ分かればその全てが分かる。

西が分かれば東西南北全てが分かる。

実に素晴らしい。

自分が歩んでいた方角は西だった事を自覚し、それで何かが変わるでも無いのでそのまま歩き続ける。

また最初に見つけたような森の穴を見つけた。

しかし最初の空間とは大きく違う点が一つある。

その空間のど真ん中。

そこに半径10mはあろうかと思う大穴が開いているのだ。

岩は露出し、その底は何処にあるのかわからない。

永遠に沈み込んでいってしまうのではないかとすら錯覚する。

自分は元々高所恐怖症だ。

降りていこう等という考えは一切浮かばず、それどころか今すぐ此処から立ち退きたいとすら思う。

しかし、太陽は沈もうとしている。

これから暗くなり、真っ暗な森の中一人で過ごすのか。

それを思うと恐怖でどうにかなりそうだ。

こんな深い穴、落ちたら死んでしまいそうだ。

それでも、何処からか湧き出る不思議な自信、絶対に死なないと言う自信を糧にその穴に落ちる事にした。


自分の自信を信じてみるのもありだなと思った。

自分は生きている。しかも、傷一つ無く。

あの後やはり怖さを感じた私は岩を伝い、ゆっくりと降りて行ったのだが、途中で岩が崩れ真っ逆さまに落ちてしまった。

死を覚悟した。

時間がゆっくりになり、全ての思想が高速化される。

ただひたすらに、死にたくない、死にたくないと脳が叫ぶ。

恐怖でその念が声に出る事は無かった。

やがて諦めた脳は思考を停止し、脱力した。

目を瞑り、その刹那それは起きた。

突然上昇気流のようなものに乗ったのか体が浮いた。

それも地面すれすれのところで。

凄い偶然もあるものだ。

助かった命に感激しながらも周りを見渡す。

何処か中華街のような雰囲気を醸し出す町並みが見えた。

どういう事なんだ。

此処は穴から落ちた、その先にある空間のはず。

それなのに栄えている集落のような場面が存在する。

町に人は歩いていないが、建物などから十分過ぎるほど生活感が見える。

最終的に私は―

考える事を辞めた。


後書き

さて早く検定結果発表してくれませんかね。

受験日から2週間ぐらい経ったしそろそろ発表してくれてもいいんじゃない?

という事で今回から地霊殿編へと導入していきます。

どうしようかな、全く話のネタが出てこないぞ。

しかしフラン編が全く進んでいない事に閲覧者が全くツッコミを入れないので安心ですね()

それでは。

よいフリーライフを。


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