第4話 能力 漣蓮視点

事の顛末を全て聞き入れた私はフランのその行動に対し、私の評価はこうだ。

素晴らしい行動力であると、賞賛した。

何故なら私が同じように幽閉された場合、自らの意思で外に出ようとなんて思わないからね。

その点ではフランの行動力は大変素晴らしいと思う。

しかし私の中にある疑問はまだまだある。

その内の一つに、能力と言うものがある。

この世界、幻想郷では人間以外の種族の全てが何かしらの能力を持っているらしい。

しかし例外的に人間にも能力を持った奴もいるらしい。

私の種族は恐らく人間だろう。

確率的に凄く微小だが能力を持っている可能性が拭い切れないので聞いてみる。

「な、なあ、私の能力って分かったりしないか?」

「えっと、私はわかんない」

う~ん、やっぱり分からないか。

うん?私は?

「え、じゃあ他に私の能力が分かる人がいるかも知れないって事?」

「確か、妖怪の賢者って呼ばれてる人なら分かると思う」

妖怪の・・・賢者・・・?

何その強そうな2つ名。

それだけ強そうな2つ名持ってるなら多分簡単には会えないんだろうな。

という事は私の能力が何か分かるのはそんな早くないって事か。

ちょっと期待してた分落胆度が半端無い。

そんな気分が落ち込んでいるとき、それは突然に起きた。

突然急激な眠気が襲ってきた。

突然過ぎて抗える事無く、そのまま眠りに落ちてしまった。


目が覚めると、そこは禍々しいという表現が一番似合う空間だった。

眠りに付いた部屋とは全く異なるその特異な空間に驚きと恐怖が支配する。

紫寄りの黒っぽい色を基調に、目のような模様がいくつもある。

地面や天井、壁と言う概念が存在しないようなその何処までも広がる空間の先。

椅子に腰掛ける人物を見つけた。

まるでテラスにあるティーテーブルのような一式の元優雅に振舞っている。

白のテーブルと椅子。その近くにどうやって立ってるのか不明な白に近いピンクのような傘。

近くに、似たような服装をしている人物が携わっている。

その人物が此方に気付き、手招きしている。

その仕草一つ一つが優雅で無駄がなく感じる。

この空間の異様さが更にそれを引き立てているのかもしれない。

されるがままにその人物達のほうへと足を運ぶ。

「どう?幻想郷、こっちの世界は」

椅子で座っていた人物が私に問う。

その問いかけには疑問が残る。

この世界はどうか、そう聞いてきたのだ。

それはまるで私が異世界人である事が当たり前であるかのように。

まるで私をこの世界に招いた当事者であるかのように。

多分驚きの表情が顔面中に出ていたのだろう。

その表情を読んだのだろうその人は次にこう問う。

「それじゃ、今貴方が一番知りたい事は何かしら?教えてあげるわよ」

一番、知りたい事・・・?

その言葉で眠りに付く前のフランとの話を思い出す。

私の能力は何なのか。

能力が無いという可能性の方が高いらしいがそれでも気になる。

「それじゃ、私の能力って、何かあるの・・・ですか」

相手の地位や立場が分からない以上、タメ口はまずいと思い、訂正する。

「敬語要らないわよ、タメ口でいいわ」

訂正を訂正された。

「それで、貴方の能力、ね」

息を呑む。

「もし此処で貴方に能力がないっていったら貴方はどうなるのかしら?」

幼少の悪戯する顔を含めた表情で此方に問う。

「泣く」

端的に答える。

「そんなの言われたら泣いた顔も見てみたいものだわ」

「あんた、性格悪そうだな」

「あら、そうかしら?」

この話に意味はあるのだろうか。

もし本当に私に能力がないのだとしたら、それはただ本当にこの人の余興に付き合っているだけと言う事になる。

だとしたら、この話に意味はあるのだろうか。

「それじゃ、話を戻すわね」

向こうの方から戻してくれた。都合がいい。

息を呑み、再度耳を傾ける。

「貴方の能力、ね・・・

 ――万物を操作する程度の能力

 だよ」

万物の・・・操作・・・。

それが何を意味するのが分からない。

まずこの言葉の意味が分かってないという部分もある。

万物、全てのものと言う意味だったはず。

操作、操るとか、使うとか、そういう意味だったはず。

全てのものを操る・・・。

語彙変換しても納得出来ない私の能力。

そんな私の心情を察してか、さっきからずっと喋らなかった傍に立ってる人物が口を開く。

よくよく見るとその人物には九尾があった。

妖狐なのだろうか。

「万物の操作、つまりは全てを操ると言う事です。そこまではご理解頂ける様で」

喋らず、首を縦に振る事により肯定する。

「全てを操る事が出来るという事は、その存在や認識すらも貴方の手中にあるという事になります」

話がややこしくなってきた。

ちょっと頭がパンクしそうになっていると、椅子に座っているほうの人物からこう付け足された。

「捉え方によっては神様にもなれるという事」

神・・・だと。

そうか、そういう事か、やっと納得出来た。

つまり、私の力は何でもどうやっても出来るらしい。

そこに現すことも出来るし、そこから消す事も出来る。

その認知や認識すらも操れるらしい。

自分の力を知り、少し嬉しくなっていたところ、椅子に座っていた人物から声を掛けられる。

「それじゃ、私は用事があるからこれで終わりね

 ・・・あぁそうだ、まだ名乗ってなかったわね」

そう言ってこちらに向き直る。

その瞬間、周りの雰囲気が一瞬で凍りつくような、そんな感覚が走る。

「私はこの幻想郷の境界を操る能力を持つ存在・・・

 ――八雲紫」

「私はその式神の八雲藍と申します」

その名前に聞き覚えはなかった。

それなのに、何処か平伏してしまいそうな威厳ある姿に気が引ける。

水戸黄門が紋所を取り出した時の様に、思わず頭を垂れそうになる。

その気はその空間の張り詰めによって失せたが。

そして名乗り終えた二人、紫と藍は何も無い空間を見つめ。

そこにゲートのようなものが開いた。

しかし直感的に覚える。

紫と名乗った人物は自らを境界を操る人物だと紹介した。

つまり今、何かしらの境界を操ったのだろう。

そしてその二人がそのゲートのようなものを通った瞬間。

世界が歪む。

臓物全てを握り潰される様な異様な感覚を覚えながらも必死に耐える。

それでも目を瞑る反射は起きたようだ。


目を開いた先、見えたのは先の空間。

フランと共に過ごしていた、あの質素な部屋だ。

そうだ、フラン。フランがいない。

何処にも居ない。先に聞いた話から推測するに、フランは自ら部屋から出る事は無いはずだ。

ましてや私を置いてなんて。

それは自意識過剰かもしれないが、それでも自然とそう思えた。

声が聞こえてきた。

笑い声。嬉しさの表現ではない。

狂気に満ちた笑い声。

そしてその声は誰のものなのか知っている。

さっきまで一緒にいた、フランの声。

今迄に聞いた事が無い、恐ろしい笑い声。

精神を蝕む笑い声に、思わず私も笑う。

狂ったように、狂人の如く。


はは、は、ははは・・・

あーっははハははッはハハハはっはハハははッ!!!!


後書き

う~んネタがない。

これ、何ていうんだっけ。

ああそうだネタの満身創痍って言うんだ。

という事で今回から漣蓮の能力が公開されます。

多分この能力が十分に発揮されるのはかなり先になるんだろうなぁ。

まあ、そんなのは置いといて。

よいフリーライフを。


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