自分ですら気が付けなかった、自分の中にあった2つ目の人格。
其れは一度対面していた、ネラと名乗った奴だろう。
確かに一度会っている。だが、其れを自分と理解出来るほどの能力は残念ながら持ち合わせていない。
彼女は私とは名前が違った。彼女は私とは考え方が違った。彼女は私とは・・・。
相違点ばかりが思いつく。
別の空間に飛ばされて、其の先の住民かと思ったが、其れを自分の心の中と捉えられる様な思考力は無い。
あれば既に理解しているだろう。
漣蓮の施した影響は余りにも絶大過ぎた。
壊したモノは全て元に戻っていた。人も、建物も、関係も・・・。
嬉しかった。感謝したい。会って直接感謝の言葉を紡ぎたい。
しかし彼は一向に私の前に現れない。
酷いのは姉達だ。
会って話した事があるはずだ。
なのに、そんな人知らないと言われた。
頭に血が上る感覚を覚えたが、それでは先の二の次になってしまうと我慢する。
其れが出来たんだなと他人事の様に感心する。
あれから、全てが良い方向へと進んで行った。
姉は私を幽閉せず、自由へと誘ってくれた。
冷たくない。むしろ暖かい。
何処を見ても、何を見ても、心が荒む感覚は今や見る影も無い。
何故だろう・・・この喪失感は、何故あるのだろう。
ただかだ人間。外の世界から迷い込んだ、能力のある特殊な唯の人間。
言ってしまえば、それだけだ。
だが、それ以上に寄せる思いがある。
彼は、経緯はどうあれ私を救った。彼はそう思っていなくても、私はそう信じてやまない。
ふと疑問に思った事がある。
姉達は、漣蓮を知らないと言う。はじめからそんな存在なんて無かったかのように。
しかし私はしっかりと覚えている。
声や、性格、その素振りに至るまで、私にしてくれた事もよく覚えている。
何一つ忘れていない。
なのに、私以外、誰も覚えていない。いや・・・知らないのだろう。
其れを思うほどに心に穴が開くような感覚が輪を描いて広がっていく。
その空虚感が、いつが限界に繋がることを危惧して、それ以上はもう考えない事にした。
それが最善。それがいい。そうじゃなきゃ、駄目なんだと。自分を、殺して・・・。
そんな時だった。空間が歪んだのは。
此れは過去に一度だけ見ている。
漣蓮が此の現象にあっていた。
時空が歪み、其処に開く異次元への扉。
通る通らないではなく、吸い込まれる。
「貴女が彼と一緒に居た娘かしら?」
見なくても、理解しなくても、其の存在の大きさを認識した。
聞こえた声に、それ以上の威圧がある気がする。
問いかけは至って優しかった。だが、存在そのものが其れを巨大なものに仕立て上げている。
予想は付く。相手が誰なのか。
「・・・はい」
しかし確信が無い。
頭を垂れ、其処から動けない。場の圧力と言うものだろうか。
「緊張しなくてもいいのよ?」
そうは言っても、無理と言うものがある。
此の雰囲気の中、此の状況の中気を置かない事なんて出来ない。
「それで、一つ貴女に言いたい事があるのだけど・・・」
息を呑んで先を待つ。その静寂が、心臓を締め付ける程に高揚する。
何も聞こえなくなったその時、続きが聞こえた。
「彼はもう帰ってこないわよ」
「・・・っ!」
主語が代名詞だった。だが、それに誰が該当するのかなんて始めからわかっている。
認めたくない。信じたくない。理解したくない。
全てを拒む姿勢は、一見唯の赤ん坊のようだ。
幼稚だと自分でも思う。しかし、そうでもしないとやってられない。
「でも、そんな事言っても貴女が納得してくれるとも思ってないわ」
何を、言っているのだろうか。
「という事で、貴女には・・・
彼と同じ世界に行ってもらう、
いい?」
何を、言っているのだろうか・・・。
彼と、同じ世界・・・?
いつか聞いた、漣蓮の元居た世界の話。
ニホンというクニに住んでいると聞いた事がある。
其れが何なのか、当時は理解していなかった。
其処に、行かないか・・・?
「嫌なら嫌って言ってくれてもいいわよ」
どう・・・しようか。
彼に会いたいという感情はある。先ほどまでそれを望んでいたのだし、願ったりかなったりなのだが。
やはり何かが邪魔をする。しかし、それが何なのかわからない。
ただ、一発に行きたいと言えるほどの勇気は持ち合わせていない。
自分は、何も出来ないのかと・・・。
「嫌そうだし、この話は無かった事に」
「行く・・・」
話を切られかけた時、半ば無意識に出た言葉。
だが、弱弱しく、威勢もない。
見てないので分からないが、今、その意志の硬さを見極められている気がする。
ここで負けてはいけない。何かがそう自分に言ってくる。
初めて、頭を上げた。
目の前にいたのは、姿形こそ聞いていた、だが実際に見るのは初めての存在。
そしてそれは思った通りの存在で・・・
妖怪の大賢者、八雲紫様だった。
彼女なら、出来る。
期待を込めて、あえて睨む。
たった今固まったその意志の強さを見せつけるべく。
「・・・そう、いいわ」
認められたのだろうか。
「でもいくつか注意して頂戴」
「・・・」
「行ったら、帰ってこれないかもしれないわ」
「彼が貴女を受け入れるとも限らない」
「それでも、意志は変わらない?」
段々と不安になってきた。
だが、一度決めたのだ。絶対に完遂してみせる。
ここで引いては、彼へあう事は本当に無くなってしまうだろう。
ただそれだけを否定するために、私は首を縦に振る。
「じゃあ、いってらっしゃい」
その言葉を尻目に、意識が離れていった。
忘れていたこの感覚。
えっと、確か私の名は・・・。
笹波華凛
だったはず。
後書き
テスト期間も終わって滅茶苦茶暇だったから書いてみたw
そんな理由で書いたので話は雑です。はい、謝りません()
書こうと持ったのが23時で、投稿宣言が24時だったからやべえ後1時間とか言いながら書いてました。
やろうと思えば50分で執筆出来るんだね内容ぺらっぺらだけど。
そんな執筆者情報をば。
テスト期間も終わってさあのんびりしようと思ったら地味に生徒会のお仕事が残ってたのです。
まだ完成していなかったり中途半端だったりして、でも本番は今週だから「あ、やべぇ」ってなってます。
じゃあ何で執筆してるのかって?
連休の最初の日に完成させて、後は先生に見せるだけ、しかし先生には会えない。だからいいや。
と言う事でし!
フラン視点て難しいな・・・(ボソッ
んじゃまあ
よいフリーライフを。
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