その後、彼、蓮から色々聞かれた。
この世界じゃ常識だと言う事まで知らないという事は、新しい人か。
幻想郷について、軽く説明すると少し蓮の表情は渋くなった。
急に表情がいつも通りのものになると、私に対する質問が来た。
「そういえば、羽といい明らかに人間じゃないけど、種族は?」
種族の事を教え、そして私は明らかに人間ではない。
ならば当然私に興味が向くだろう。
何故それを予測出来なかったのか。
自分の浅はかな行動に蝕まれる自分。
今迄感情を持つ相手と喋った事がなかったとしても、質問には答える主義であった。
答えたい、のだが。
「えっと・・・嫌がらない?」
私は純血の吸血鬼である。
人の血を吸い、時には殺す、人間からすると恐怖の対象となるべく種族であるのだ。
たとえ今迄一緒にいたとしても、それ以上に目の前の種族に対する恐怖の方が圧巻するだろう。
「こんだけ理不尽な事起きてんだ、何を今更驚く事があるってんだ」
驚くとはちょっと違う気もするけど、そう言ってくれるならまだ有難い。
意を決し、自分の種族を伝える。
こんな事、今まではありえなかったのになと他人事のように思いながら。
「私は・・・その、吸血鬼・・・かな」
やはり、怖い。
どう思われるのか。どう捉えられるのか。
嫌われるのではないか。離れてしまうのではないか。
一人は嫌だ。怖い。恐い。何故種族を明かしたのかと後悔する。
「マジか吸血鬼!?かっけ~!!」
「ふぇっ?!」
凄い声が出た。
しかしそれ以上に驚きが強い。
吸血鬼を、格好良い・・・?
もしや吸血鬼がどのような種族か知らないのではないか。
それはそれで嬉しいとは思うけど、いつか必ずバレてしまう。
なら今明かした方がいいと思い、口を開く。
「えっと、もしかしたら君の血、吸うんだよ?」
本当、曖昧な言葉になったと思う。
やはり怖いのだ。離れられるのが。拒絶されるのが。疎外されるのが。
―帰って来た言葉に絶句する。
「そんなん知ってるわ、それより吸血鬼なんだな!本当だな!!」
知ってるとそっけなく何処かへ行き、代わりに吸血鬼である事を認めさせようとしている。
「う、うん、吸血鬼・・・だけど」
嘘偽りなく、そのまま返す。
仮に嫌われるのなら、最初の方がいい。
無駄に思いがこもった相手に拒絶されるのが一番心に来るからだ。
なのに・・・。
「っしゃ~~~!!!!」
と言う声と共に全身で喜びを表しているように見える。
何故だと。
彼に対する疑問は解決出来ているとは言え増える一方だ。
私は吸血鬼。人の血を吸い、時には殺しもする。
その中に、彼も、蓮も入っているかもしれないと言うのに本人は何処か関係無さそうな反応。
無下に扱うその態度に呆気に取られる。
「そういえば、何で嫌がると思ったんだ?」
先程まで滅茶苦茶喜んでいたのに直ぐに次の質問が来る。
嫌がる理由。そんなの・・・。
「だって・・・吸血鬼って言ったら、皆離れて行くから」
今迄の経験則だ。自分の経験ほど信用出来る教訓は無いだろう。
その教訓が吸血鬼である事を明かせば皆離れると警鐘をならす。
今更遅いが。
「ま、私は吸血鬼好きだし気にしないがな」
吸血鬼が、好き・・・。
ありえない感情を持つ人間も居るものだと。
何故だ。何故彼は私に接しようとする。
この吸血鬼が好きと言う言葉も何処か空虚なものではないのか。
もし、これが私が傷付かないようにする為の配慮の一種だったら。
その時、自分の考えに驚く。
誰かが、私の為に、何かする。
ありえない。そんな事。
しかし今私はそれを願ったのだ。
駄目だと。心を開いてはいけないと。精神の全てが拒否反応を起こす。
心を開けば探り込まれる。
心をグチャグチャにされ、私を壊すのだ。
相手が裏切るかもしれないという考え。
裏切られても心を傷付けない為に、相手を信用してはならない。
信用した分だけ損をする。
だと言うのに。
何故か彼を、蓮を信じたいという思いは一切無くならない。
「・・・普通に可愛い顔してんだな」
丁度そんな事を思っていた時に、蓮から掛けられた声に驚く。
急に喋ったからびっくりした。それもあるだろう。
だが、本当に驚いたのは其方ではない。
彼は、今何と言ったのか。
可愛い、だと?
初めて言われた。
人生で、初めて。
他人に、自分の容姿を褒められた。
褒められた事も無い。
今迄私に対しての感情は蔑みや忌みだった。
だが、今の彼はどうだろう。
蔑みの感情も、忌嫌うような感じも無い。
この感情は、何なのだろう。
嬉しいけど、喜べると言うわけではない。
負の感情では無い。
感情なんて、分からない。
しかし何処か上がってしまうような、逸る気持ち。
居た堪れなくてベッドに隠れる。
けど暑かった。毛布を放る。
悪い意味ではないが、悶える。
こんな事をしてもどうにもならないと理解しているのに、こうでもしないと報われないと言うか。
どれだけ注意力が下がっていたのだろう。
悶え、ベッドの上を転がっていたらそのまま落ちた。
とりあえず、今の行動に対して蓮に一言。
「て、天然じゃない!」
あぁ、思い出した。あの感情。
恥ずかしかった、んだろう。
恥ずかしい思いではあるが、嬉しさもあった。
感情。こんな豊かになれるのだなと他人事のように評価する。
その時は蓮の自己紹介を受けていたな。
確か、ニホンって所から来たらしい。
元の世界の名前が分からないのは今に始まった事ではないので受け流す。
そんな感じで蓮の色々を知る。
興味津々に。
―あれ、なんで。
他人に興味があるんだ?
後書き
何故1週間続けてテストを受けにゃならんのや。
まあいいや。
このストーリーを書く時物凄く大変だと思ったらそういえば二視点同時に進行してたわ。
そりゃ難しいだろうな。
普通の小説とかラノベは主人公視点で話を進めて、アクセントに他の視点を入れるってのに。
まあ、キャラ別にストーリー確立させなきゃいけないから必然ではあるのだけど。
一回どっちか集中して進めていけば発展が早いかな?
そんな事も考えながら。
よいフリーライフを。
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