唯さんの誕生日も過ぎ去り、次は年末年始が来る。
年越しはいつになっても心が躍るというか、ワクワクすると言うか、ソワソワするものだ。
去年は今みたいにペアである唯さんとは喋れなかったので特に何かしたわけではないが、今となってはかなり打ち解けた仲だとは思ってる。
勝手な想像かも知れないと思っちゃうのは陰キャの性だよね。
今年は何をして年越しを迎えようかと考えてる、そんな時の話。
「・・・年越し、何かする?」
「考えてはいるけど、何も思いついてない」
「・・・そっか」
「今冬コミやってるのか~・・・」
「・・・行く?」
「はっはっは、何を言っておられるのですか唯さんや」
「・・・多分、行けるよ。若干お金かかると思うけど」
「えっ!?」
そう言って暫くスマホの画面とにらめっこする唯さん。
そして何分か経った時、其のスマホの画面を見せてきた。
「・・・親と」
其処には「コミケ行きたい」と言う投稿の後に「じゃあ行こう!」と記されていた。
付随して「蓮君も一緒に行くのかい?」と言う向こうからの質問に、唯さんは答えていない。
もしかして、自分で答えろと・・・?
と言うか、其方のご両親は僕の事知ってるのか。
「いつ僕の事を喋ったのだ・・・」
「・・・1年の、終わり」
「去年か」
「・・・そう。んで、行くの?」
「行けるなら行きたいけど、出来るの?」
「・・・聞いてみる」
暫くの間スマホと格闘して・・・。
「・・・行けるって」
そう見せてきたのは先の画面に続く会話があった。
「行きたいって」「じゃあ連れてこ~!」
其方のご両親、すっげ~ハイテンションだな絶対勘違いされてるって。
と言うか・・・。
「え!?コミケ行けんの!?」
「・・・らしいね」
「ま、マジか・・・」
「・・・嫌?」
「逆だよ、最高過ぎる」
「・・・良かった」
俯いていて其の顔は見えなかったが、少し頬が紅かった。
と言う一連の話を唯さんの前で漣蓮らに喋った。
唯さんの許可を得て・・・な!
漣「はぁ!?冬コミ行くん?おめえら・・・」
笹「良いな~・・・」
鳴「という事で一つ商売なのだが」
言「・・・聞いてない」
鳴「今言うからね、ちょっと乗って下さい」
言「・・・分かった」
漣「取引じゃなくて商売なんだ」
笹「流石商業科」
鳴「其れは関係無くね?」
漣「んで、どんな商いをするんだ?」
鳴「其の前に、ちょっとだけこっちで話させてくれ」
言「・・・ん?」
鳴「ちょっと、話を」
そう言って部屋の隅に誘導する。
「二人、連れてってもいいか?」
「・・・私は、別に、構わない」
「其方のご両親方は」
「・・・何人でも来いって言ってる」
「既に予想済みかぁ・・・何か怖いなぁ」
「・・・で、商いって何するの?」
「手数料としてちょっとだけ徴収しようかと」
「・・・いいの?」
「元手無しで行こうと思ったら凄い金額になる所、格安の値段で抑えてあげてるんだから、普通はのるっしょ」
「・・・そういうもん?」
「そういうもんだと思ってる」
「・・・じゃ、いいよ」
「あざっす」
二人の前に戻り。
「という事で前置きは終わろうか」
「どんな要求されるのだろうか・・・!」
「何で若干浮かれてんのさ」
「・・・変な人」
「既知の情報をわざわざ口に出さなくても分かってるよ」
「よぉおめぇ喧嘩売ってんなぁ買ってやるよ」
「じゃあ取引だ」
「結局取引なんだ・・・」
「無視か我ぇ!」
「コミケ・・・一緒に行かないか?」
「「え!?」」
「さっき此方の方と交渉したのですがね、他に誰を連れてっても良いと言ってたんですよ」
「ふむ」
「いつに無く真剣に聞いてるねぇ」
「だが、コミケの入場には参加証が必要なのはわかってると思うが」
「あぁ、そういやそうだな」
「我らは当日券を買うつもりだ」
「其れがどう関係するんだ?」
「君達には前売り分の料金とちょっとだけ払って頂きたい」
「550円とちょっと?」
「600円にしようか、切りが良いし」
「僕が少しだけ多く負担するから、次のイベントで何か買って」
「成る程、結果的に俺らが損する一見得のある交渉だな」
「さ、流石商業科高順位。簡単に見抜かれた」
「誰でも分かるやろ」
「分からんかった」
「・・・流石」
「誰でもは分からないみたいですね」
「あれぇ?」
「って言うか、何のイベントを見越して言ってるんだ?」
「博麗神社例大祭」
「あっはい、おめぇさんらしいな」
「んで、結局乗ってくれるのか?」
「どする?」
「私は安くして貰えるなら、いいとは思うよ」
「まあ、例大祭と比べたら圧倒的にコミケの方がいいもんな」
「よっしゃ今すぐ帰れ」
「ごめんて」
「んじゃ来るって言で宜しいか?」
「行きた~い」
「行けるなら行きたいっす」
「んじゃぁ行こう!」
皆が帰った後。
「・・・良かったの?」
「ん?何が?」
「・・・返って来るけど、お金出しちゃって」
「あ~そっか、言ってなかったな」
「・・・ん?」
「お財布に入ってる金額は乏しいけどな」
「・・・うん」
「貯金額だけは人に自慢出来るほどあるから」
「・・・どのくらいか聞いても?」
「確かね~・・・あ、そうそう」
「・・・うん」
「10万くらいかな」
「・・・え」
「いや実際は9万と5000くらいだから盛ってるんだけど」
「・・・そんなに、持ってたんだ」
「おっと集る気か!?私は驚くほど守銭奴じゃけん払ったらんぞ!!」
「・・・集る気は無いけど、良く貯めたね」
「昔から貯める事だけは上手くてね」
「・・・凄いね」
そんな訳で30日の朝から用事が入りました。
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